戦略とインテリジェンス

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2014年 01月 07日

職人芸的な分析の危険性

Rob Johnston”Analytic Culture in the U.S.Intelligence Community”CSI,p.20.
(http://vadl.cc.gatech.edu/documents/
4_Johnson_Analytic_Culture_CIA_-_Johnston.pdf)

「情報分析がトレードクラフト(分析業務において培われた経験的スキル)であり続ける限り、それはミステリーのままである。トレードクラフトの質は、分析官個人の生来の認知能力と、良き師匠(効果的でユニークな分析手法を発見した師匠)との幸運な出会いに依存している。ただ、その分析プロセスは、一般的に科学的なプロセスに類似している。しかし、トレードクラフトで学んだ教訓は、他の学問分野における教訓と異なり、保存されたり、テストされたり、立証されることはない。また、口頭伝承において、個人のトレードクラフトの方法は徒弟制度によって伝えられる。そして口頭伝承の文化においては、実務者の喪失とともに重要な知識が失われてしまう。組織においては、知識を生かしておく何らかの正式な教育システムが存在しない限り、専門家や革新者の引退が、その専門性と革新性の喪失につながることになる。」
「大きな問題は、手法そのものを開発することにではなく、情報コミュニティ全体において、手法の検討と実証を行ってその有効性を確認するために、手法を明確に説明することである。長期的に見れば、情報分析の科学的手法の開発は容易である。だが、分析の実務者と管理者の認識を変えること、そして、それによって分析手法の文化を変えることが困難なのである。」

先日公表された「国家安全保障戦略」「新防衛大綱」のインテリジェンス関連部分において、共通していたのが、優秀な情報専門家の育成という課題でした(「高度な能力を有する情報専門家の育成を始めとする人的基盤の強化(国家安保戦略)」「能力の高い情報収集・分析要員の統合的かつ体系的な確保・育成のための体制の確立(防衛大綱)」)。では、その「育成」における中心的課題は何であろうかと考えると、その一つはやはり「情報分析能力の向上」だと思います。ただ、一口に情報分析能力といっても、その能力は経験に裏打ちされたアートと定式化された手法によるサイエンスの両面があり、その両面をどのように習得させるかが重要なのでしょう。そこで、上記のとおり、情報分析における職人芸的分析手法(トレードクラフト)に頼ることの危険性をジョンストンの論文から抜粋して紹介しました。つまり、ベテラン分析官の職人芸的な分析手法は、経験的な暗黙知にとどまっているがゆえに、その分析結果は教訓として残らず、また、形式知として組織に伝承されないということが問題なんですよね。従って、優秀な情報専門家を育成するには、ジョンストンが言うように、形式知として伝承が可能な分析手法、つまり分析手法マニュアル(職人の技を形式知化した内容も含む)のようなものを新人に対して組織的に教育することが必要だと思います。そして、当該マニュアルには、バイアスに関する知識や戦略、作戦戦術というレベルに応じた理論等(過去エントリ参照)が網羅されていることが望ましいと思います。ただ、上記の最後にあるように、職人芸の文化に染まった情報コミュニティの現場では、マニュアルのような形式ばった手順はなかなか受け入れてくれないという現実もあるようです。こうした文化的障壁に関しては、ホイヤーらによって書かれた"Structured Analytic Techniques for Intelligence Analysis"(Amazonで購入可能)などを積極的に紹介・実践していくことで、組織内の理解を広めて行くしか手はないのでしょう。

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by Imperialnavy | 2014-01-07 20:35 | インテリジェンスの失敗 | Comments(0)


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