戦略とインテリジェンス

ijnavy.exblog.jp
ブログトップ
2014年 01月 15日

不確実性と公式化の程度

桑田耕太郎、田尾雅夫『組織論[補訂版]』有斐閣、2011年、82、85頁。

「不確実性とは、意思決定主体が環境要因について、合理的意思決定をするのに十分な量の情報を持っていないことを意味する。」「環境の不確実性は、組織の管理システムの公式化の程度に影響を与える。「公式化」は、あらかじめ用意された規則や責任-権限関係等によって対応できる程度を意味する。」「すなわち不確実性が低ければ、公式化の程度は高くなる。(略)一方、変化が速く、不確実性の高い環境の組織では、規則や手続きはあらかじめ用意されていないか、あっても実際の仕事の場では、しばしば無視されている。」

前回、情報分析手法の定式化と教育の必要性について紹介しましたが、上記のように組織論の観点から見れば、そもそも不確実性が極めて高いインテリジェンス組織で手順を公式化することは非常に難しいのかもしれないですね。従って、その教育内容は、あくまでも基本形としての手順や分析上の心構え的な内容にとどまるのでしょう。
[PR]

# by Imperialnavy | 2014-01-15 19:10 | 戦略全般 | Comments(0)
2014年 01月 07日

職人芸的な分析の危険性

Rob Johnston”Analytic Culture in the U.S.Intelligence Community”CSI,p.20.
(http://vadl.cc.gatech.edu/documents/
4_Johnson_Analytic_Culture_CIA_-_Johnston.pdf)

「情報分析がトレードクラフト(分析業務において培われた経験的スキル)であり続ける限り、それはミステリーのままである。トレードクラフトの質は、分析官個人の生来の認知能力と、良き師匠(効果的でユニークな分析手法を発見した師匠)との幸運な出会いに依存している。ただ、その分析プロセスは、一般的に科学的なプロセスに類似している。しかし、トレードクラフトで学んだ教訓は、他の学問分野における教訓と異なり、保存されたり、テストされたり、立証されることはない。また、口頭伝承において、個人のトレードクラフトの方法は徒弟制度によって伝えられる。そして口頭伝承の文化においては、実務者の喪失とともに重要な知識が失われてしまう。組織においては、知識を生かしておく何らかの正式な教育システムが存在しない限り、専門家や革新者の引退が、その専門性と革新性の喪失につながることになる。」
「大きな問題は、手法そのものを開発することにではなく、情報コミュニティ全体において、手法の検討と実証を行ってその有効性を確認するために、手法を明確に説明することである。長期的に見れば、情報分析の科学的手法の開発は容易である。だが、分析の実務者と管理者の認識を変えること、そして、それによって分析手法の文化を変えることが困難なのである。」

先日公表された「国家安全保障戦略」「新防衛大綱」のインテリジェンス関連部分において、共通していたのが、優秀な情報専門家の育成という課題でした(「高度な能力を有する情報専門家の育成を始めとする人的基盤の強化(国家安保戦略)」「能力の高い情報収集・分析要員の統合的かつ体系的な確保・育成のための体制の確立(防衛大綱)」)。では、その「育成」における中心的課題は何であろうかと考えると、その一つはやはり「情報分析能力の向上」だと思います。ただ、一口に情報分析能力といっても、その能力は経験に裏打ちされたアートと定式化された手法によるサイエンスの両面があり、その両面をどのように習得させるかが重要なのでしょう。そこで、上記のとおり、情報分析における職人芸的分析手法(トレードクラフト)に頼ることの危険性をジョンストンの論文から抜粋して紹介しました。つまり、ベテラン分析官の職人芸的な分析手法は、経験的な暗黙知にとどまっているがゆえに、その分析結果は教訓として残らず、また、形式知として組織に伝承されないということが問題なんですよね。従って、優秀な情報専門家を育成するには、ジョンストンが言うように、形式知として伝承が可能な分析手法、つまり分析手法マニュアル(職人の技を形式知化した内容も含む)のようなものを新人に対して組織的に教育することが必要だと思います。そして、当該マニュアルには、バイアスに関する知識や戦略、作戦戦術というレベルに応じた理論等(過去エントリ参照)が網羅されていることが望ましいと思います。ただ、上記の最後にあるように、職人芸の文化に染まった情報コミュニティの現場では、マニュアルのような形式ばった手順はなかなか受け入れてくれないという現実もあるようです。こうした文化的障壁に関しては、ホイヤーらによって書かれた"Structured Analytic Techniques for Intelligence Analysis"(Amazonで購入可能)などを積極的に紹介・実践していくことで、組織内の理解を広めて行くしか手はないのでしょう。

[PR]

# by Imperialnavy | 2014-01-07 20:35 | インテリジェンスの失敗 | Comments(0)
2013年 12月 26日

革新的軍事技術

Shawn Brimley, Ben FitzGerald and Kelley Sayler
“Game Changers: Disruptive Technology and U.S. Defense Strategy” 
http://www.cnas.org/game-changers#.UrqXR9yCj4g

◆革新的軍事技術に必要な4要素(pp.11~13)
①調和(ハードとソフトの組み合わせ。例:ドイツ電撃作戦)
②視点
③背景(倫理、社会的価値観に反する技術は受容されない。)
④時間(技術は成熟するまで時間がかかる。)

◆革新的軍事技術が生まれそうな5つの分野(pp.14~18.)
①加法的製造(3Dプリンター)
②自律システム(無人機)
③指向性エネルギー兵器(電磁パルス、レーザー、ミリ波等)
④サイバー
⑤人間のパフォーマンス改造

相手の能力がこうした観点から将来どのように変化するのかといったことを分析することが必要なのかもしれないですね。その際、我が国ではとても社会的に許容されないような技術を採用する可能性を考慮し、ミラーイメージングに陥らないことが大切だと思います。
[PR]

# by Imperialnavy | 2013-12-26 18:59 | その他 | Comments(0)
2013年 12月 18日

国家安全保障戦略(インテリジェンス)

昨日、閣議決定した国家安全保障戦略のインテリジェンス関連部分について

http://www.mod.go.jp/j/approach/

agenda/guideline/pdf/security_

strategy.pdf


「国家安全保障に関する政策判断を的確に支えるため、人的情報、公開情報、電波情報、画像情報等、多様な情報源に関する情報収集能力を抜本的に強化する。また、各種情報を融合・処理した地理空間情報の活用 も進める。さらに、高度な能力を有する情報専門家の育成を始めとする人的基盤の強化等により、情報分析・集約・共有機能を高め、政府が保有するあらゆる情報手段を活用した総合的な分析(オール・ソース・アナリシス) を推進する。加えて、外交・安全保障政策の司令塔となるNSCに資料・情報を適時に提供し、政策に適切に反映していくこと等を通じ、情報サイクルを効果的に稼働させる。こうした情報機能を支えるため、特定秘密の保護に関する法律(平成 25年法律第108号)の下、政府横断的な情報保全体制の整備等を通 じ、カウンター・インテリジェンス機能を強化する。 」


要点は、収集、分析、情報共有の強化ということですな。また、情報専門官の育成を強調しているところをみると、インテリジェンスにおける人間の認知能力の重要性をよく認識しているように見えます。ただ、過去のエントリでも示したように、情報に失敗しないためには分析官の能力の他に、政策決定者や作戦立案者のインテリジェンスに対する十分な理解と的確な情報要求が必要なんですよね。また、カスタマーがインテリジェンスの限界や優先順位を認識し、分析官に必要以上にプレッシャーをかけたり、個人的趣味のような情報を要求しないことも大事ですね。こうした点を指導者になる人材に対してしっかり教育してもらいたいと思います。


[PR]

# by Imperialnavy | 2013-12-18 20:02 | その他 | Comments(0)
2013年 12月 16日

中国の大軍拡

愛読(?)している中国網の記事から最近の中国海軍の大軍拡に関する記事を紹介します。

まず、下記の記事によると中国のイージス艦が間も無く10隻になるそうです。
http://japanese.china.org.cn/test/txt/
2013-11/15/content_30611993.htm
ちなみに日本は6隻です・・

また、いつの間にやらステルス型のミサイル艇保有数が世界最多になったそうですね。
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/
2013-11/04/content_30493973.htm

さらにフリゲート艦をわずか10日間で3隻進水させてます。
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/
2013-10/09/content_30239354.htm

しかもちゃんと実弾打って訓練に励んでいます。
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/
2013-12/16/content_30909926.htm
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/
2013-10/20/content_30348386.htm

こうしてみると、質量ともに近いうちに日本を圧倒するのではないかと思ってしまいます。もはや衆寡敵せずなんでしょうか?
少なくとも、日本が色んな意味で大きく変革しなければならない状況であることは確かなようです。

[PR]

# by Imperialnavy | 2013-12-16 21:40 | 戦略インテリジェンス | Comments(0)