戦略とインテリジェンス

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2014年 02月 20日

70年以上前からあった無人機攻撃の発想

ハイラム・バーシー・マキシム著、吉見海軍大佐訳「将来の大戦と科学応用」『有終 第23巻 第12号』海軍有終会、1936年、72頁。著者は米国発明家技師。科学雑誌ポピラーメカニック2.3月号掲載記事の訳文。

「無人飛行機が数百機も各々強大なる爆弾を搭載して上昇し、敵機と戦を交へるであらう。斯くの如き飛行機はラジオに依りて操縦せられるらので、高周波無電電波が放送所から放たれるるや、其の作用によりて任意に操作せられ、如何なる動作をも地上より命ずる事ができる。」「右の如き無人飛行機の搭載する大爆弾又は空中魚雷は、敵の大都市、兵器製造工廠等の中心或は兵站廠等に投下し、(中略)戦線の遥か後方の無防備地帯に大損害を加へ、人民を殺戮し、建造物を破壊するのである。」

最近、にわかに注目を集めている無人機攻撃も、その発想や原理は70年以上前からあったということですね。とすると、逆になぜ実運用されるまでにこれほど時間がかかったのかという点が疑問です。
ちなみに話は変わりますが、新しい軍事技術というものは、単に技術的な実現可能性だけでなく、倫理や用兵思想、組織の都合といった様々な要因によって装備化されていくそうです。この点、日本海軍は漸減邀撃の艦隊決戦思想で巨大戦艦や巨大潜水艦を建造する一方で、レーダ開発を当初、闇夜に提灯を灯すようなものとして退けましたね(『元軍令部通信課長の回想』より。)。その結果は言うまでもありませんが、さて、今の自衛隊はどうなのでしょうか?

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# by Imperialnavy | 2014-02-20 22:49 | その他 | Comments(0)
2014年 02月 18日

戦争の理論

吉田和男、藤本茂編著『グローバルな危機の構造と日本の戦略』晃洋書房、2013年、214〜217、222頁。

◆戦争は社会的結合を増大させ、様々な国内的欲求を解消する魅力を持つ。
◆戦争は対立している勢力の力が接近しているときに勃発の可能性が高まる。
◆現状変更国家の軍事力が現状維持国家の軍事力を追い抜いた時に現状変更国家が現状維持国家に対して戦争をしかける可能性が高くなる。
◆戦争を起こすメリットは経済的利益と政治的利益の両側面から計算される。ただし、政治的利益は経済的利益と異なり数字では表せない。
◆小規模な戦争はコストが小さいため大規模な戦争を躊躇する国も戦争の規模が小さければ戦争を躊躇しない場合がある。
◆敗戦のコストと不戦のコストに差が無くなり、かつ勝つチャンスがある場合、座して死を待つよりも一か八かで戦争に掛けてしまうことがある。

戦争がどのような時に起こるのかといった本質的な問題に対して、極めて単純明快な前提を提示しており、分析を行う上で参考になります。当然、実際に分析を行う際は、このような前提を参考にしつつ、当該国の戦略文化や国内政治、経済的な依存関係などの様々な要素の分析も必要です。ただ、こうした基本的な視座は分析の基礎的素養として必要だと思います。特に、時間が切迫している場合、悠長に分析している暇は無いので、こうした前提に立って迅速に最悪の戦争勃発シナリオを検討することが必要なのかもしれません。

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# by Imperialnavy | 2014-02-18 00:05 | 戦略全般 | Comments(0)
2014年 02月 10日

中国の戦略文化(孫子だけではない)

浅野亮「中国の戦略・安全保障文化」『国際政治 第167号』日本国際政治学会、2012年。

30頁「孫子だけが中国の軍事戦略の古典ではない。(中略)孫子だけを見るわけにはいかないが、孫子に触れずに中国の戦略・安全保障文化とその諸研究をすることはできない。」
35頁「人民解放軍の標準教科書シリーズともいえる《国防大学叢書》を見ると『軍事戦略導論』、つまり軍事戦略の解説の入り口では、(中略)中国古代の戦略が、当時の政治、社会、経済や技術上の条件のもとでのものである点を強調しており、単純に孫子を崇拝しているわけではない。」「《国防大学叢書》のもっと具体的な内容の『軍事戦略論』では、戦略の総合的性格が強調されているが、孫子の兵法など伝統的軍事思想への言及はほとんどないといってよい。」

以前、ルトワックの『自滅する中国』の内容を引用して、中国が孫子の教えに基づいた行動パターンをとっている可能生があることを述べました。しかしながら、上記の引用内容を見れば、そうした見方は分析を誤らせる危険な認知バイアスにもなりうると言えそうです(いわゆる利用可能性バイアス?)。確かに「孫子」は上記にあるように、中国の戦略文化を形成する重要なテキストであり、中国の行動を単純に説明するのに便利な内容を含んでいます。ただ、はやり「孫子だけをみるわけにはいかない」のであり、中国の行動パターンを理解するには、他の古典や上記に紹介されているような現代のテキストなどを網羅的に分析する必要があるということでしょう。















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# by Imperialnavy | 2014-02-10 23:21 | 戦略インテリジェンス | Comments(0)
2014年 01月 29日

イラン革命の予測になぜ失敗したのか

Robert Jervis,Why Intelligence Fails Lessons from the Iranian Revolution and the Iraq War, Cornell University Press, 2010,pp.15~32,108.

◆要求・収集関連
・SAVAKからイラン国内の政治や反政府勢力の情報は提供されていなかった。
・イランの国内政治はCIA作戦部の優先順位のリストには無かった。
・出回っていたホメイニ師の発言を収めたカセットテープすら収集しなかった。

◆分析関連
・CIAにイランの政治と経済の分析官はそれぞれ2名ずつしかいなかった。
・外部の学者や専門家との意見交換もほとんどなかった。
・報告文書の内容は記述的で、多くの事実が述べられていたにすぎなかった。
・CIAの分析は社会科学というよりも、ジャーナリスティックな内容であった。

◆四つの主要なエラー(マインドセット)
①「危険な状況であればシャーは取締りを強化するだろう」という先入観
②「体制は盤石であり、シャーは必要となれば強権を発動するだろう」という先入観
③宗教やホメイニ師に対する無理解(イスラム原理主義の勃興の見落とし)
④ナショナリズムと反米主義の見落とし・誤解

要は、的確な情報要求と収集努力、分析官のマンパワーとマインドがとても重要ということが、イラン革命の教訓からも明らかということです。また、分析官の仕事というものは、ニュース解説のようなものではなく、社会科学の方法論にそった「分析」であるべきという点は示唆に富むものです。ただ、やはりこのケースにも見られたように人手と時間が足りないにもかかわらず、次から次へと雑多な情報を評価しなければならない環境にあっては、社会科学的な方法を厳密に実践することはなかなか難しいのでしょう。この点、ホイヤーのACHなどは反証と比較を重視した簡便な方法であり、少なくともこうした手法ぐらいは実践すべきだとは思います。
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# by Imperialnavy | 2014-01-29 19:44 | インテリジェンスの失敗 | Comments(0)
2014年 01月 18日

レベルによる情報源などの違い

Michael I. Handel,Intelligence and Military Operations,CASS,1990,p.27.

《主要な情報源》
◆戦術レベル 
•偵察と敵との直接接触
•捕虜の尋問
•通信傍受
•レーダー
◆作戦レベル
•偵察と敵との直接接触
•捕虜
•航空写真
•暗号解読、方位測定
•偵察衛星
•無人機、ドローン
◆戦略レベル
•高度のシギント
•ヒュミント
•偵察衛星
•同盟国との協力とオシント

《情報の信頼性の程度と消費期限》
◆戦術レベル
•非常に短い消費期限
•即時的行動に活用
•情報の信頼性は非常に低いか中程度に低い
◆作戦レベル
• 短い消費期限
•行動へのプレッシャーは強い
•行動に関する情報の信頼性は非常に低いか中程度に低い
◆戦略レベル
•中期か長期の消費期限
•即時的行動へのプレッシャーは弱い
•信頼性は中程度か高度

よくインテリジェンスの情報源のほとんどは公刊情報だ、などと言われることもありますが、ハンデルによれば、相手国軍事力の能力や意図などはシギントや偵察衛星などが主な情報源なようですね。従って、作戦・戦術レベルの分析担当者は、シギントやイミントといったテキントの分野に知悉する必要があるのでしょうね。また、上記にあるように、作戦・戦術レベルでは情報の消費期限が短く、実際の行動と密接にリンクしているので、戦略レベルのインテリジェンスとは大きく異なるインテリジェンスの体制が必要とされているということでしょう。なお、リーダーはこれらのレベルやその特徴をよく認識して、インテリジェンスの要求を出す必要があると思います。

 


 







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# by Imperialnavy | 2014-01-18 13:35 | 作戦・戦術インテリジェンス | Comments(0)