戦略とインテリジェンス

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カテゴリ:戦略インテリジェンス( 10 )


2014年 08月 06日

人民解放軍初の兵棋システム?

中国網 7月23日「解放軍初の大型兵棋演習システム、「兵棋」が開発」
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2014-07/23/content_33034425_5.htm

「7年をかけて開発された中国初の大型コンピュータ兵棋演習システム、戦争の勝利の秘訣を教える「兵棋」は未来の勝利に向けて、現代の戦争をありのままコンピュータに移し、中国軍の特徴と未来の戦争の実情に合ったバーチャルの戦場を構築する。実戦に限りなく近い兵棋演習により、中国軍が未来の戦争で勝利を収める可能性が高くなる。これは兵棋演習の魅力だ。」

掲載されている写真をみると国防大学に設置されたようです。国防大学については、下記の記事が参考になります。

「国防大学は中央軍事委員会に直属する人民解放軍の最高学府として、将官昇任予定者及び大軍区等指揮官さらには中央・地方政府の閣僚級高級官僚に対する教育を行う教育機関である。また、人民解放軍の最高シンクタンクとして中央軍事委員会及び4総部2への政策提言機関でもある。」
(山本勝也「防衛駐在官の見た中国 (その1)-人民解放軍国防大学への留学-」http://www.mod.go.jp/msdf/navcol/SSG/topics-column/col-007.html より)
ということは軍種を超えた国家、軍事戦略レベルのシミュレーションを行うということですね。

ちなみに他ブログの記事によると最近、「中国はY-20輸送機を最大400機まで調達すべき」との主張を含む軍民統合の理論と実践についての報告書を出したそうです。
(海国防衛ジャーナル http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50732397.html より)
おそらくこうした軍事理論の検証にもこのシステムが使われるのでしょう。

それにしても初とありますが、これまでこうしたシステムは無かったのでしょうか?それともスーパーコンピュータでも使った画期的なシステムという意味での「初」なんでしょうか?あと、2番目に掲載されている写真を見ると「島」を巡るシミュレーションのようにも見えますが気のせいでしょうか・・
いずれにしても興味深い記事です。

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by Imperialnavy | 2014-08-06 21:26 | 戦略インテリジェンス | Comments(0)
2014年 02月 10日

中国の戦略文化(孫子だけではない)

浅野亮「中国の戦略・安全保障文化」『国際政治 第167号』日本国際政治学会、2012年。

30頁「孫子だけが中国の軍事戦略の古典ではない。(中略)孫子だけを見るわけにはいかないが、孫子に触れずに中国の戦略・安全保障文化とその諸研究をすることはできない。」
35頁「人民解放軍の標準教科書シリーズともいえる《国防大学叢書》を見ると『軍事戦略導論』、つまり軍事戦略の解説の入り口では、(中略)中国古代の戦略が、当時の政治、社会、経済や技術上の条件のもとでのものである点を強調しており、単純に孫子を崇拝しているわけではない。」「《国防大学叢書》のもっと具体的な内容の『軍事戦略論』では、戦略の総合的性格が強調されているが、孫子の兵法など伝統的軍事思想への言及はほとんどないといってよい。」

以前、ルトワックの『自滅する中国』の内容を引用して、中国が孫子の教えに基づいた行動パターンをとっている可能生があることを述べました。しかしながら、上記の引用内容を見れば、そうした見方は分析を誤らせる危険な認知バイアスにもなりうると言えそうです(いわゆる利用可能性バイアス?)。確かに「孫子」は上記にあるように、中国の戦略文化を形成する重要なテキストであり、中国の行動を単純に説明するのに便利な内容を含んでいます。ただ、はやり「孫子だけをみるわけにはいかない」のであり、中国の行動パターンを理解するには、他の古典や上記に紹介されているような現代のテキストなどを網羅的に分析する必要があるということでしょう。















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by Imperialnavy | 2014-02-10 23:21 | 戦略インテリジェンス | Comments(0)
2013年 12月 16日

中国の大軍拡

愛読(?)している中国網の記事から最近の中国海軍の大軍拡に関する記事を紹介します。

まず、下記の記事によると中国のイージス艦が間も無く10隻になるそうです。
http://japanese.china.org.cn/test/txt/
2013-11/15/content_30611993.htm
ちなみに日本は6隻です・・

また、いつの間にやらステルス型のミサイル艇保有数が世界最多になったそうですね。
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/
2013-11/04/content_30493973.htm

さらにフリゲート艦をわずか10日間で3隻進水させてます。
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/
2013-10/09/content_30239354.htm

しかもちゃんと実弾打って訓練に励んでいます。
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/
2013-12/16/content_30909926.htm
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/
2013-10/20/content_30348386.htm

こうしてみると、質量ともに近いうちに日本を圧倒するのではないかと思ってしまいます。もはや衆寡敵せずなんでしょうか?
少なくとも、日本が色んな意味で大きく変革しなければならない状況であることは確かなようです。

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by Imperialnavy | 2013-12-16 21:40 | 戦略インテリジェンス | Comments(0)
2013年 12月 15日

中国の戦略文化(危険な孫子の教え)

エドワード・ルトワック『自滅する中国 なぜ世界帝国になれないのか』芙蓉書房出版、2013年。

109頁「そもそもこの孫子の『兵法』という素晴らしい書物が強烈な誤解を招きやすい(というか危険ですらある)」
112頁「中国の「戦国時代/兵法の心理」の「名残り」、もしくは同一文化内の規範を異文化間の紛争に誤って応用することの「弊害」として最初に目につくのは「国際関係においては無制限にプラグマティズムを使っても良い」という前提だ。」
114頁「二つ目の「名残り」の例を挙げてみよう。中国の政府高官たちによくみられるのは「外国との間の長年にわたる未解決の紛争は、故意に危機を煽ることで解決できる」という考え方だ。」
118頁「三つ目の「名残り」は、欺瞞そのものや、欺瞞よって可能になる策略と奇襲攻撃への、過剰なまでの信奉である。」

中国の戦略文化を理解する際に参考となる内容です。
上記の内容から中国の行動パターンを端的に表すと、
①無制限なプラグマティズム(実用主義)により相手国との関係を損得勘定でとらえ、深い信頼関係を築こうとしない。②故意に危機をあおることで、相手を交渉に引きずり込もうとし、強制的に譲歩させようとする。③欺瞞を行ったうえで、奇襲攻撃を行う。
更に端的に言い換えると「損得で相手を評価し、威嚇と騙しと奇襲のテクニックで相手から利益を得ようとする」ということでしょうか。まぁそう単純なものではないとは思いますが、ただこうしてみると、防空識別圏の設定は上記②と③のパターンを実行したものとも言えそうですね。さて今後も同様のパターンで新手の策を繰り出してくるのでしょうか・・・

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by Imperialnavy | 2013-12-15 19:04 | 戦略インテリジェンス | Comments(0)
2013年 12月 11日

アメリカの対外政策(スパイクマン)

ニコラス・J・スパイクマン『平和の地政学-アメリカ世界戦略の原点-』扶養書房出版、2008年。
(1944年に出版された本の全訳版)

129頁「地政学的な分析から考えると、アメリカは地理的に包囲されているように見える。(中略)この国の安全と独立を守るために必要なのは、ユーラシア大陸にある国家がヨーロッパとアジアで圧倒的かつ支配的な立場を獲得するのを不可能にするような対外政策の継続だ」

132頁「我々が戦っている目的の一つはユーラシア大陸のパワーの均衡にあり、我々が勝った後の目的も、そのような均衡状態の達成と維持にある。したがって、アメリカの国益はリムランド統一への動きを阻止する国家たちと、引き続き協力関係を維持していくことにある。」

アメリカの対外政策の「前提」を考える上で参考となる内容です。戦後の前方展開戦略そのものですね。ところで、この文書、戦争が終わる前に書かれています・・アメリカの戦略的思考の一端が少し分かる気がします。
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by Imperialnavy | 2013-12-11 18:07 | 戦略インテリジェンス | Comments(0)
2013年 11月 19日

戦略インテリジェンスの定義

JP 2-0, Joint Intelligence, 22 June 2007
(http://www.dtic.mil/doctrine/new_pubs/
jointpub_intelligence.htm)

◆国家戦略インテリジェンス
大統領、議会、国防総省、上級軍事指揮官等に対して作成されるインテリジェンスのこと。国家戦略や政策の立案、国際情勢のモニター、軍事計画、装備体系や軍事組織の構造の決定、戦略的オペレーションの実施に利用される。

◆地域戦略インテリジェンス
統合作戦を支援し、国家安全保障と同盟国の国益に影響する現在と将来における彼の能力を把握するためのインテリジェンス。いつ、どこで、どの程度の強さの敵が現れ、地域レベルの会戦が生起するのかといったことを明らかにするために利用される。

国家戦略インテリジェンスを生産するには、少なくとも国際政治の理論を把握しておく必要がありそうです。また、地域戦略インテリジェンスを生産するには、それなりの地域研究が必要なのだと思います。ということで、引き続き国際政治の理論と地域研究的な内容をメモしていこうかと思います。
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by Imperialnavy | 2013-11-19 23:22 | 戦略インテリジェンス | Comments(0)
2013年 11月 18日

国家間関係の三つのレベル

高坂正堯『国際政治 恐怖と希望』中公新書、1966年、19頁

「各国家は力の体系であり、利益の体系であり、そして価値の体系である。したがって、国家間の関係はこの三つのレベルの関係がからみあった複雑な関係である。国家間の平和の問題を困難なものとしているのは、それがこの三つのレベルの複合物だということなのである。」

ジョセフ・S・ナイ、デイヴィッド・A・ウェルチ『国際紛争 理論と歴史 原書第9版』有斐閣、2013年、406~407頁。

「グローバルな情報化時代にあっては、パワーは、垂直のみならず水平にも展開される複雑な3層のチェス・ゲームに似たパターンで、諸国家間に分布している。政治・軍事問題をめぐる最上層のチェス・ゲームでは、軍事力は唯一の超大国たるアメリカを中心にもっぱら単極であるが、経済問題をめぐる2層目では、アメリカは覇権国や帝国ではなく、ヨーロッパが足並みを揃えて行動する時には、対等の立場で交渉しなければならない。(中略) 政府の統制の届かない国境を越えた脱国家的関係という最下層のチェス盤では、銀行家からテロリストにいたるさまざまな主体が活動していて、パワーは広く分散している。」

似たような内容だったので並べてみました。

・力の体系―政治・軍事に関する最上層のチェス盤
・利益の体系―経済に関する2層目のチェス盤
・価値の体系―脱国家的関係に関する最下層のチェス盤

こうした見方でもって国際情勢を見る必要があるということです。
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by Imperialnavy | 2013-11-18 22:05 | 戦略インテリジェンス | Comments(0)
2013年 08月 27日

バックパッシングとバンドワゴン

ランドル・L・シュウェラー「第10章 同盟の概念」船橋洋一編著『同盟の比較研究』より引用

◯バックパッシング(ただ乗りの一形態)
脅威の矛先を他国に向けたり、脇役にとどまるという方法でバランスをとるためのコストを発生させないことで利益を得る方法。防衛的国家/同盟が侵略者からの攻撃のほとんどを引き受け、その過程で侵略者を決定的に痛めつけている間に安全に傍観するというもの。
◯バンドワゴン
強い側の同盟に加わること。防衛的バンドワゴン(弱小国が無駄な戦争のコストを避けるため大国に屈服して同盟すること。)、ジャッカル的バンドワゴン(弱い現状不満国が現状不満国のリーダーを支持することと引き換えに、変更後の分け前を得るため、当該リーダーにバンドワゴンすること。)、パイリングオン・バンドワゴン(戦いの結果が確定した後に、勝利者側にバンドワゴンして分け前にあずかること。)の三種があり、後の二つはバックパッシングの一形態

最近の韓国の親中反日姿勢を分析する際に参考になりそうです。
なお、高麗時代や李氏朝鮮時代の「事大交隣」外交は、言わば防衛的バンドワゴンを中華帝国にしていたということでしょうか。
ちなみに、韓国メディアは、日本が軍事大国となって侵略してくる可能性を毎日のように報じていますが、不思議と中国艦艇の外洋展開や軍拡といった中国の軍事的脅威についてはあまり報じていないように見受けられます。やはり「見たくないものは見えない」という心理なんでしょうかねぇ。
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by Imperialnavy | 2013-08-27 00:09 | 戦略インテリジェンス | Comments(0)
2013年 08月 25日

リアリズム その2

ジョン J ミアシャイマー『大国政治の悲劇 米中は必ず衝突する❗ 』五月書房 2007年
より引用

以下の問いに対する代表的リアリストの考え
①国家にパワーを求めさせる原因
②国家はどれだけのパワーを欲しがるのか
1 ハンスモーゲンソー(人間性リアリズム)
①国家に備わっているパワーへの欲望
②最大限得られるだけ。国家は相対的なパワーを最大化し、最終的な目標は覇権達成にある。
2 ケネスウォルツ(ディフェンシブリアリズム)
①アナーキーな国際システムの構造
②持っているもの以外は求めない。国家は既存のバランスオブパワーの維持に集中している。
3 ミアシャイマー(オフェンシブリアリズム)
①同上
②最大限えられるだけ。国家は相対的なパワーを最大化し、最終的な目標は覇権達成にある。

中国の際限の無いパワー追求の姿勢を分析する際に参考になります。
ちなみに、中国の軍拡に関する最近の報道として下記のようなものがあります。

「軍事力強化のテンポ 中国の某造船所が7隻の駆逐艦を同時建造」中国網
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2013-08/22/content_29797300.htm
「中国のH-6K爆撃機、アジアのパワーバランスに影響」中国網
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2013-08/22/content_29792060.htm

ますます、日本との相対的な軍事的パワーの差が広がっていくようです。
なお、リアリズムの理論はそれぞれの国の性質(戦略文化など)というものをあまり考慮に入れていません。
そのため、中国の性質に対する分析が必要となります。
そこで参考になるのが、最近、出版されたエドワード ルトワックの『自滅する中国』
http://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/4829505907
中国の攻撃的性質を理解するのに参考になります。
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by Imperialnavy | 2013-08-25 13:40 | 戦略インテリジェンス | Comments(0)
2013年 08月 25日

リアリズム その1

モーゲンソー『国際政治 権力と平和』福村出版、1998年、69頁
「宥和政策は(相手国の)帝国主義政策を現状維持政策と取り違えてしまうことによって誤りを犯す、堕落した妥協政策だといえよう」「宥和政策をとるものは帝国主義国が次々に出してくる要求の目的を合理的に限定されたものとみなす」「宥和政策をとるものの誤りは、帝国主義の要求が決してそれだけで独立しているわけでもなければ、また特定の不満から生まれたものでもなく、ついには現状の打破をもたらすに至る鎖の輪のひとつにすぎないということを見落としている点にある」

中国の意図を考察する際に参考になる一文です。
例えば尖閣問題。中国は日本の国有化があたかも現在の対立の発端のように主張しています。しかし、国有化以前に、1971年の突然の領有権主張、1992年の領海法制定、2008年の海監の領海侵犯といった中国政府の現状を変更しようとする一連の行為があったわけであり、こうした行為こそ対立の原因であったと言えます。今、思えばこうした一連の行為は「現状の打破をもたらすに至る鎖の輪」の一部だったのでしょう。要は何事もまずは時系列で分析して各事象の関連をよく考える必要があるということです。
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by Imperialnavy | 2013-08-25 13:21 | 戦略インテリジェンス | Comments(0)